アメリカの電子たばこ及びVAPEの規制・フレーバーバンは一体どのように決着するのか?

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2019年9月11日にトランプ大統領がほぼ全ての電子たばこの販売を禁止する方針を表明してから約3ヶ月、アメリカでは近く新しい電子たばこ(E-cigarette)又はVAPEの規制内容が発表される見込みです。

当初の9月11日時点での方針では、政府はたばこ味を除くほぼ全ての電子たばこの販売を禁止するというものでした。ところがその後規制案について方針がコロコロと変わる事態となります。

中でもフレーバーに関する方針については、当初たばこ味だけが規制対象外とする方針だったのが、ミントとメンソールも対象外にしようということになり、その後やはりミントは規制対象としようとなり二転三転することとなります。

一方でフレーバー単位で規制するのはおかしい、製品区分単位で規制しようという声も高まり、JUULのようなカートリッジタイプは規制して、リキッドを都度注入するタイプは規制対象外にしようという主張も聞かれるようになります。また、成人用VAPEショップは規制対象外にしてコンビニなどは規制しようとする販路規制案の意見も出てきます。

また、電子たばこはみなしたばことして、今のFDAの方針では全てPMTA(Premarket Tobacco product Application)という約100万ドルとも言われる費用をかけて製品を申請して認可されなければ将来販売できないとされていますが、これを見直して欲しいというVAPE業界の声も目立つようになります。

未成年者たちが主にカートリッジ製品を使用していることを示唆している公的なデータが示され、中でもJUULがメインのアイテムであることが政府関係者にも認知されるようになってきます。

こうした状況を経て、トランプ大統領は11月22日にVAPE業界や州責任者などをホワイトハウスに一堂に集めてミーティングを開催、直接のヒアリングに乗り出すこととなりました。

今回の一連の経緯でVAPERの間でも大変な不興を買っているのがJUULです。先のホワイトハウスミーティングにおいても、伝統的たばこの喫煙者がスイッチするためにはフレーバーが必要との見解をほぼ全ての電子たばこメーカーが示したのに対し、JUULだけがフレーバーの重要性は認めつつもたばこ味とメンソール味だけあれば構わないというスタンスを示しました。

関係者の懸念は結局フレーバーを規制したところで、たばこ味であれメンソール味であれ、JUULのニコチンが気に入ってしまえば未成年は結局受け入れてしまうだろうという至極真っ当なものです。

JUULの強みはスタイリッシュな形状の他に独自特許のニコチンソルトにあります。スムースなニコチンの吸入を可能とするものです。デバイスは小型であるため出力は低く、フレーバーの美味しさを追求する高機能なVAPEプロダクトとはコンセプトが異なります。コンビニや年齢確認が完全とは言えなかったオンラインでも手軽に入手できたことから、結果として多くの未成年者に蔓延しニコチン依存に導いてしまっています。JUULの競争力の本質はENDS(Electronic Nicotine Delivery Systems)にあり、フレーバーではありません。少しでもVAPEプロダクトに触れる機会があったり、VAPEプロダクトのレビューをウェブなどで見る機会があれば、一般の方にとっても割と容易に想像できることと思います。

現時点でPMTAを申請できているのはBATグループ1社のみであり、JUULも申請の準備が整っていると表明しています。もしこのままの状況が続くようですと、上記2社を除く全ての電子たばことVAPE製品の販売が将来一切禁止されるという事態になります。大手企業は資金力がありますので、大掛かりな規制に乗る立場であれば他の細々とした競合が自然と淘汰されることになり、市場を独占することも可能です。

VAPERやVAPE業界はこのJUULのフレーバーバンに前向きな姿勢を特に批判しています。多彩なリキッド、アトマイザーやMODを取り揃えてフレーバーを嗜好として楽しんでいるVAPERからすれば、フレーバーを生け贄にして自社のニコチンソルトを守ろうとするJUULの姿勢には納得がいきません。未成年者を中毒に巻き込んでいるのは他ならぬJUULのハイニコチンであって、問題の本質をなぜフレーバーにすり替えるのかと怒っているのです。

イギリスではニコチンの総量を規制しつつ電子たばこを伝統的たばこの禁煙・節煙に活用するようになり、喫煙人口の低下及び医療費の削減に成功しています。アメリカではJUULの未成年使用が社会問題化するほどに蔓延してしまいましたから、今からイギリス方式をそのまま採用するのは難しいかもしれません。よりドラスティックな対応を取らないと学校関係者などから大きな反発を招く可能性があります。またほとんどのフレーバーを禁止したとしてもアメリカ中のVAPERから同じく反発を招くでしょう。このような状況下では、JUULのようなカートリッジタイプや使い切りタイプはPMTAの申請すら受け付けず、まずは全面禁止にしてしまう可能性はそれなりに高いように思われます。もしくは超低濃度のニコチンに限定する形でPMTAの申請を受け付けするかもしれません。これであれば現在FDAが表明している伝統的たばこのニコチン含有量を減らす将来の規制方針などにも沿います。FDAにはやはりニコチン中毒者を減らしていくという大原則があります。喫煙人口を減らせたのに未成年者のニコチン中毒を増やしてしまったアメリカの現状は、FDAにとっては絶対に看過できない事態でしょう。

一方でリキッドを再注入するスタイルのいわゆるオープンタイプVAPEは、VAPERやVAPEショップを保護する意味でもPMTAの管轄から外れるのではないかと思っています。つまりVAPEはみなしたばこから外れる。カートリッジタイプや使い切りタイプのみがE-cigarette(電子たばこ)として区分され、みなしたばことして引き続きPMTAの申請対象になるように思います。

トランプ大統領もホワイトハウスでのミーティングで、全面禁止には否定的な姿勢を見せています。自身の兄をアルコール依存症で亡くしていることもあり、禁止一辺倒ではなくハームリダクションの考えに近いようです。ハームリダクションとは、個人が、健康被害や危険をもたらす行動習慣をただちにやめることができないとき、その行動にともなう害や危険をできるかぎり少なくすることを目的としてとられる実践、指針です。VAPE業界の代表者達も思いのほかトランプ大統領がこの考え方に対して理解が深かったことに、良い驚きを持ったそうです。

いずれにしてもアメリカ政府がどこに着地点を見出して決着させるのか、興味深く見守りたいと思います。

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