電子たばこあるいはVapingによる製品使用関連肺傷害(EVALI)の本質的な問題

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9月11日にトランプ大統領がほぼ全ての電子たばこの販売を禁止する方針を表明して大きなインパクトを与えました。その問題の発端になったものの一つが後にEVALI(E-cigarette、or Vaping、product use Associated Lung Injury)と呼ばれることになる肺損傷疾病です。

米疾病予防センター(CDC)は現時点でその原因の一つとしてビタミンEアセテートがあることを認めています。ビタミンEアセテートはTHC(テトラヒドロカンナビノール)を希釈する際の増粘剤として使用され、闇市場でカートリッジに入れられた状態で流通したと見られています。THCはいわゆるマリファナであり、本来のVG、PG、フレーバーやニコチンなどを主成分とする電子たばこ用リキッドとはかなり成分内容が異なります。ただデバイス自体が似たようなものを使うので、見た目には一般的な電子たばこ用なのかTHC用なのか一見してはわかりません。政府の方針としては原因が明らかになるまで、安全確保のために全ての電子たばこの使用を控えるよう通達を出すことになりました。

調査は今も続いていますが、現時点ではビタミンEアセテートがリポイド肺炎の主原因として特定されるようになり、全てのEVALIで当物質の混入が認められています。また個々の症例によってまちまちのようですが、その他の物質も複合的に作用していた可能性が疑われています。そのうちの一つがマリファナ違法栽培者などが使用する農薬/殺菌剤の一種である「ミクロブタニル」。燃焼すると非常に毒性の高い致命的な「シアン化水素」に変換される大変危険な物質です。疾病の原因となった商品は全て闇市場で流通していたため、そもそものTHC自体の品質に問題があったと疑われています。

EVALIの調査は粛々と進められており、時間とともに疾病の詳細が明らかになりつつあります。本来この手の話は直接的な原因を突き止めたら対策をして終わりです。ただ今回の騒動がややこしいのは、このEVALIの問題の発生と同時にJUULの未成年者の使用蔓延も一緒くたに報道され、例の9月11日のトランプ大統領の突然の「電子たばこ禁止」表明に至ったことです。

CDCが後日認めたようにEVALIは闇流通のTHCが原因です。ですが9月11日の発表では情報も不十分なまま色々なことがごちゃ混ぜになって発表されました。9月11日の発表の要点は以下のようなものでした。

・学校から排除出来ず社会問題化 教育関係者からの風当たり強まる。

・ミントやメンソールも含まれる予定 タバコ味は除く。

・最近の疾患例で製品にビタミンEアセテートオイルが含まれており大麻のTHC等が疑われている。

といったところです。

学校から排除できなくて社会問題化しているのはハイニコチンのJUULです。子供達がニコチンに依存してしまっているのは以前から知られていました。

ここにフレーバーの問題が一緒に持ち出されます。タバコ味以外は未成年者の興味を引き電子たばこの入り口となるというものです。

もう一つは先述した後日EVALIと呼ばれるようになった肺疾患です。VAPE業界からすればビタミンEアセテートやTHCは全く関係のないお門違いの物質です。

報道時点ではこれ以外の詳細な情報はありませんでした。

業界は大混乱です。

内容を落ち着いて紐解いていけば、事故が起きているのは闇THCの商品であり、未成年者の使用が問題になっているのは手軽にハイニコチンを摂取できるJUULである。ショップレベルの知識があればすぐに理解できます。VAPEショップは多くの種類のフレーバーのリキッドを取り扱っています。JUULはコンビニやガススタンド、オンラインでの販売が主だったため、VAPEショップにそれほど関係がありませんでした。闇流通のTHCももちろん関係ありません。しかしそれらの自分たちには殆ど関係の無い商材によって、VAPEショップは突然大きな影響を受けることになります。州や都市の中には独自の裁量で全ての電子たばこの販売を決定したところがあり、THC商品もJUULも売っていないのに多くのVAPEショップが突然閉店に追い込まれる憂き目にあったのです。リキッドメーカーもあるところは平年の半分以下の売り上げに落ち込むなど、今もなお影響は甚大です。

マリファナ(THC0.3%以上)は州によって合法と非合法の州に別れています。当初THCが全ての原因と断定されなかった理由には、症例者の自己申告が事実と異なっている点がありました。このような法律の背景も影響して後ろめたさもあり正直に申告しづらかったものと考えられます。THCをしっかりと管理していればこのような事態は防げたはずですが、連邦法ではマリファナは依然として違法であるのに対し、州や都市レベルでは合法な地域があるという、安全管理上極めて危うい体制が今もなお続いています。本来このEVALI問題は、THC関連商品の安全管理が不十分だったから起きてしまった問題と言えます。マリファナに関する製造や販売が高い次元で一元管理されていれば、このような問題は起きなかった可能性があります。

現在、州や都市レベルで全ての電子たばこの販売を禁じる措置を講じている地域がありますが、そもそも安全に関わることが同じ国で州によって扱いが異なるというのは、特に我々のような外国人には理解し難いことです。嗜好用大麻や医療用大麻を率先して合法化した州は、経済力を高めることにはある程度成功しているようですが、同時に高い税金逃れを目的とした闇市場も生み出してしまっています。さらに州だけでなく都市レベルでも扱いが異なり、とても一定の安全基準を平均的に担保できる状況にはありません。産業用ヘンプの大規模栽培を合法化する法案は2018年12月に成立したものの、現時点においてもFDAによる規制の変更は確定しておらず、大麻関連商品の製造、販売に関わる規制は州間で異なっている状況に変わりはありません。

カリフォルニア州では2018年1月に嗜好用のマリファナが合法化されました。その結果、販売が禁止されている大半の州に出荷する目的での違法栽培も同時に社会問題化します。違法業者たちは殺鼠剤や農薬を大量に使用。当時の市販品のランダムサンプリング調査では、既に後の肺損傷の原因の一つと疑われることになる「ミクロブタニル」が検出されていたことが明らかになっています。まさにアメリカの統治制度が生み出した闇です。翌年、それらが業界を超えて電子たばこにも波及することとなりました。

EVALIは電子たばこが原因ではなく、むしろ税収を優先して結果的に安全管理が疎かになってしまった「人災」とも言えます。州や都市が安全にまで責任を持てれば良いのですが、結果は現時点で最悪なものになっています。その州や都市が、また独自の判断で電子たばこの販売禁止措置を講じているのは全くもって皮肉な事態です。アメリカは地域中心の利己主義的な闇を取り除き、別の意味でアメリカファーストで一つにならないとまた同じような過ちを繰り返してしまうのではないでしょうか。

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