中国の突如とした電子たばこのオンライン販売規制に思う

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中国は2019年11月1日に電子たばこのオンラインストア閉鎖を要請する通達を突如として出しました。通達は、たばこ規制当局が監督する国有たばこ専売公社「中国煙草」のウェブサイトに掲載されました。政府は電子たばこに関する何らかの規制を10月までに発表するとかねてから伝えられていましたが、中国国内の全てのオンラインでの販売禁止といった強力な措置は全く予想されておらず、業界内でも衝撃を持って受け止められました。

中国では共産党政権の方針は絶対です。文面では販売中止の奨励とされていますが実質上の禁止通達です。中国では電子たばこに関する規制が何もなかった状況で、ニコチン入り電子たばこも煙草という扱いではなくネットでも販売されていました。規制の理由は未成年者の保護ということです。この点に関しては現時点(11月24日)でアメリカ政府が問題視しているのと同じです。ただ、アメリカが未成年に蔓延したJUULなどを製品区分で規制しようとしている点に対して、中国は販売区分によって規制しようとしている点が大きく異なります。これはいったい何故でしょうか?

この規制について現地では様々な憶測を呼んでいます。政府の方針が絶対的である中国ではアメリカとは全く違って言論の自由が保証されておりません。ですから迂闊に批判的なことを主張しようものなら国家反逆罪に問われかねません。それでも少しの声は漏れ聞こえてくるものです。

中国は世界最大のたばこ消費国であり、たばこ会社は全て国営です。外資たばこ企業もこの権益を脅かすことは許されておりません。その「中国煙草」は最近になって電子たばこの販売を始めています。種類はIQOS(アイコス)のような高温加熱式のたばこ及びアメリカで問題になっているJUULのようなニコチン入り電子たばこです。なんとたばこ葉を使った高温加熱式だけでなく、リキッドタイプの電子たばこを中国煙草が独自の銘柄で販売し出したのです。これらの新型たばこの販売開始に歩調を合わせるように政府からオンライン販売禁止の通達が出されたものですから、業界では「未成年者保護は建前で、たばこだけでなくニコチンの税収を確保するのが本当の目的だ」との批判が聞かれたりします。確かに製品区分単位で規制してしまえば、中国煙草も販売が出来なくなってしまいます。ニコチン入り電子たばこを敵として排除するのではなく、税収手段として利用してしまおうと考えているのではないかというのです。
一方で実店舗でも電子たばこ店への風当たりが強まっているようです。有名なショッピングモールWANDA(ワンダ)では新規のテナント入居を拒否するなどの事例も起きています。ただ中国では煙草の金額が安いこともあって電子たばこのシェアは他国のように高くはなく、またJUULがオンラインモールで販売開始したことなどを受けて、政府が各国の動向を見ながら予防的措置に踏み切った側面が強いようにも思えます。(JUULは11月1日の規制通達前の9月時点で個別に「謎の販売中止」の措置を受ける。)

アメリカでは伝統的煙草のシェアが下がり続け、JUULなどのニコチン入り電子たばこのシェアが急増しています。アメリカはたばこ会社も電子たばこ会社も民間企業で、中国はたばこ会社は国営でニコチン入り電子たばこは民間企業だけが扱っていました。新型たばこという新しい資金源になる武器を確保出来そうなこのタイミングで措置に踏み切ったのだという説です。

発表になったタイミングもとても興味深いものです。通達文書の日付は2019年10月30日付けですが、実際に掲載されたのは11月1日の午後3時過ぎと言われています。10月30日、31日、11月1日の3日間は上海でVAPEの展示会が催されており、私もちょうど現地に滞在していました。多くの業者が一同に介しており、混乱を避けるためにも10月までに発表するとしていた当通達の日付を期日通り10月付けにして、発表タイミングを少し遅らせたようにも思えました。

中国はオンラインショッピングの比率がとても高く、今回の措置が民間企業に与える影響は大変大きいものがあります。ただアメリカと違うのは、アメリカではJUULが未成年に蔓延してしまい社会問題化するほどの状況であったのに対し、中国では電子たばこはシェアも小さく伝統的煙草が依然として嗜好品の消費の中心である点です。両国とも同じように未成年者防止が目的とされていますが、背景は大きく異なっていることは理解しておいた方が良いでしょう。また、JUULの爆発的な流行はアメリカのFDAでも予見できず、既にあった法規制案の方向修正を余儀なくされたことも中国政府の判断に大きな影響を与えたものと思われます。

中国はアメリカとは違って絶対にオープンに議論されることはなく、各法律などにも透明性を担保する必要もありません。共産党政権が盤石であればそれで良いのです。法律は常に上から下へと強制力をもって発動され、そこに民主的な建設的議論は介在しません。逆に言えば動乱さえ起きなければ泥沼化することなく粛々とドラスティックに新しい制度を制定することが出来ます。アメリカではWE VAPE WE VOTEというVAPERの強力な反対運動が盛んです。実際に共和党やホワイトハウスは票への影響を恐れ、大統領にも懸念が伝えられたとされています。電子たばこひとつをとっても全く違う両大国の対応経緯は、一般の方にとっても興味深い事例ではないでしょうか。

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